日常日記

日々起こることを自分なりに考えていくブログ

素晴らしきかなドナルド・トランプ

        「アメリカの文化大革命

 

大統領選の翌日、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は社説にこう書いた。確かに今回の大統領選は民衆が政治の世界を牛耳るエスタブリッシュメント(既得権益層)に反旗を翻した「革命」であった。

 

早いものであの衝撃の大統領選から二週間が経過した。ほとんどの人達がトランプなんかが大統領になれるわけないと言っていた中で「いや、トランプ大統領になるぞ」と周囲に語っていた僕にとってマスメディアや知識人の尤もらしく語っていることの「嘘」が崩壊したあの日、11月9日、そしてその日から必死になって言い訳を並べている今日までは実に愉快な日々であった。

 

なぜ彼らは状況を読み間違えたのか。いくつかの理由が考えられるが大きな理由としては「人は自分の見たいものを見たがる」という人間心理が働いたというべきだろう。(それらがいくら権威がある知識人やメディアであっても)

 

「ヒラリーのような聡明な女性がトランプみたいな下品な奴に負けるわけがない」、「トランプの主張する排他的な政策は時代に逆行する」、「予備選までは勝てても本選では多くの国民は彼を選ばないだろう、ヒラリーは圧勝するんじゃないか」多くのメディア、それに連なる知識人、またそれらの言説に触れた人達は「願望」と「事実」を混同してしまった。

 

その点を夏前から指摘していたのは自身は猛烈な反トランプでこれまで権力を批判し続けてきた映画監督のマイケル・ムーアである。

 

www.huffingtonpost.jp

 

詳しくは記事を読んでもらいたいが、ムーアがトランプ大統領誕生の理由として挙げた5点の理由を要約すると

 

・ トランプが元々、民主党が強い地域(労働者が多い)であるラストベルト(ミシガン、オハイオペンシルベニアウィスコンシン)の票を取ることに注力し、成功する。

・ 白人の怒りを元にした最後の抵抗

・ ヒラリーの不人気とトランプ支持者の熱気

・ 意気消沈したサンダース支持者はヒラリーを積極的に押さない

・ 大衆の改革願望

 

まるで選挙後に書かれたかのような見事な分析である。ここにトランプが大統領になった要因が全て網羅されているといっても過言ではない。この分析を7月の時点で行っていたのだからさすがマイケル・ムーアである。

 

なぜマイケル・ムーアにこのような分析ができたのか?

それは彼が今回、主なトランプ支持層であった白人中間層の内実を掘り下げた作品をこれまで作り続けてきたからである。そしてグローバリズムに取り残されてきた人達のことを誰よりもよく知っているからである。

 

しかしマイケル・ムーアは当然ヒラリー支持だった。

私はここにこそアメリカ社会の分断を見出した。つまりいわゆるリベラルとされる知識人、著名人は庶民の味方であるようなふりをして国家や国民よりも多様性や人類愛を重視するので非常にグローバリズムと親和性が高い。

 

安い労働力としての移民とグローバル経済は兄弟のようなもので行き過ぎたグローバル化とは国家の価値を国際基準の下に置くということなのである。グローバル化の中では国家の伝統的な価値や思想は「障壁」と見なされてしまうのだから。

 

そこで本来の意味での「保守」は国家の伝統的価値を中心とした良い意味での「国家主義」を打ち出さねばならないのに(これは我が国でも全く同じだが)レーガン以降、本来「保守」の共和党政権がよりウオール街と密接になった結果、2代政党の対立軸が希薄になりアメリカ社会に閉塞感が充満してしまった。有権者は既成の政治家に期待しなくなった。

 

あらゆるアメリカの価値観はグローバルな市場の下に沈殿し、国家を運営するリーダーも大企業のロビイスト達にコントロールされている。自分達には選択肢が最初から与えられていない。絶望だ。しかし今回の選挙で彼らに「救世主」が現れた。ドナルド・トランプだ。

 

「Make Amerika great again」(偉大なアメリカを再び)、トランプが何度も繰り返すこのコールは失われたアメリカを取り戻してくれると多くの白人層、中間層を引き付け、雇用をアメリカに復活させるという政策は労働者に「希望」を与えた。

 

これらの点を無視して今だにトランプ大統領誕生を「反知性主義」、「ポピュリズム」の観点からしか語らない識者と称する人達は一体アメリカの何をみてきたのか。

 

また政策は関係なくトランプの「差別発言」、「女性蔑視発言」が問題で彼を大統領にすべきでないと言う人達が多くいる。(日本でもアメリカでも)

しかし何をもってトランプを「差別主義者」とするのか?

もっと言うと何をもって「差別」とするのか。

 

たとえばトランプは「不法移民」を追い出すと言っている(選挙後は犯罪歴のある不法移民と発言を修正)。不法な移民を追い出すことは果たして人種差別だろうか?

オバマ政権は不法移民をいわば黙認してきた。民主党支持者は「不法」な移民でも公権力で追い出すことに反対であろう。しかし不法な移民を人権的な観点から見逃すことは秩序を維持すべき国家が「不秩序」を黙認するという一種、国家の存在意義そのものに関わる問題である。

 

「メキシコ人は麻薬や犯罪を持ち込む」、「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」といった発言も多くのメキシコからの犯罪者の流入、欧州各国で頻発するテロへの国民の不安、本音をぶちまけたもので、確かにこれを問題と捉える人もいるでしょうが、しかしここで問われている本質は誰もストップをかけれないグローバル急行にストップをかけ国家を再興するということです。

 

今回の選挙の本質は「強い国家アメリカ」VS「多様性に富んだグローバルアメリカ」

との戦いだった分けです。その結果、強い輝いていたアメリカに惹かれる内陸部の白人中間層やアメリカンドリームを生きてきた中高年以上の人達はヒラリーの言う「ひとつのアメリカ」よりトランプの「偉大な国アメリカ」を選んだのです。

 

建前ばかり言って自分達の価値(メリークリスマスでなくハッピーホリデイズと言わねばならなかったり)、率直な愛国心、国家への帰属意識を行き過ぎたPC(ポリティカルコレクトネス)で抑えつけ、トランプ支持者をバカ扱いしてきた沿岸部の人間、一部の特権的なエリートに「NO」を突きつけたのはアメリカに良きデモクラシーが根付いている証拠でもあるのです。

 

www.asahi.com

 

のちに歴史を振り返った時、2016年11月8日は「国家再興の日」として語られているかもしれません。最後に都市部のエリート、マスコミの「差別的」報道、扱いに怯むことなくむしろ暴言で立ち向かい、選挙資金、マスコミ、ウオール街全てのバックアップを受けたヒラリーをたった一人で打ち負かしたドナルド・トランプ。きっと彼は偉大な大統領になるはずです。